2018年11月22日に名古屋の日本ガイシホールで行われた宇多田ヒカルのコンサート「LAUGHTER IN THE DARK TOUR 2018」名古屋公演に行ってきました。
アリーナ2列目の席とという間近で体感できたコンサートはあっという間に時間が過ぎた至福の時間。

ほぼ全てがヒット曲というセットリスト、カッコいいとしか言いようのないライブ・アレンジ、曲と曲のつなぎ方、「First Love」からの「初恋」、そして「PLAY A LOVE SONG」という曲の並び、又吉直樹さんとのショート・フィルムなど
それらは全て「歌」のためにあるのだと、シンプルにその1点のための演出なのではないかと。
何度もありがとうと繰り返しオーディエンスに感謝を伝えていた彼女。こちらこそありがとう、と伝えたくなるコンサートでした。
セットリスト

宇多田ヒカル「LAUGHTER IN THE DARK TOUR2018」@日本ガイシホール 2018年11月22日 セットリスト
- あなた
- 道
- Traveling
- COLORS
- Prisoner of Love
- Kiss & Cry
- SAKURA DOROPS
- 光
- ともだち
- Too Proud
- 誓い
- 真夏の通り雨
- 花束を君に
- Forevermore
- First Love
- 初恋
- PLAY A LOVE SONG
アンコール
- 俺の彼女
- Automatic
- Goodbye Happiness
最新アルバム「初恋」からの曲も、これまでの曲もまんべんなく散りばめられたセットリスト。どの曲も知っている状態という素晴らしい選曲でした。
ライブレポート

開演5分前に会場に到着。客席は当然のように満員で、これからう宇多田ヒカルのコンサートが始まるのだという実感があまり湧かないまま席に着席。
ステージ上手にはストリングスとピアノ、下手にはギターやベース、ドラムにパーカッションに多くのキーボードが用意。赤い照明が独特の雰囲気です。
照明が落ち、メンバーがステージ袖から歩いて現れてスタンバイ。ストリングス以外の楽器隊は全員外国人で、アルバム「初恋」のレコーディング・メンバーかな?
ベースの人だけはテレビの映像で見覚えがありました。宇多田ヒカルの姿はこの時はまだ見えない。
唐突に照明が付き、ステージ中央に現れた宇多田ヒカル。1曲め「あなた」からコンサートの幕が開く。
黒いワンピースのドレスは背中が大きく開いていて腰のあたりまで肌は見えるほど。シンプルでセクシーな衣で歌う姿に「うわぁ本物だぁ」などと幼稚な感想に。
ピアノと声のシンプルなイントロ。いつもイヤホンで聞いているのとは違う、体全体で音楽を味わえることがもう嬉しい。
続いて「道」とアップテンポな曲で観客は総立ちに。跳ねるようなリズムに手拍子も。
曲が終わると同時に「Travering」がスタート。曲と曲の合間に空白はなく、繋いでいくそのスキルとタイミングは脱帽モノ。
「道」と「Travelling」はテンポも似ているし、スピード感が心地よい。後半のアウトロにかけて少しジャムっぽいバンド演奏になり、カオスな感じがまた最高にカッコいい!
続いて「COLORS」「Prisoner of Love」と誰もが知る名曲が連発。安定したリズムにのって情感たっぷりに歌い上げて行く姿に聞き惚れます
「Kiss& Cry」では「Can you keep a secret」の一部がミックスされたアレンジ。(hit it off like this)
そして「SAKURA DOROPS」「光」(!)を演奏。随所にライブ・アレンジが施されていて聞き慣れた曲も新鮮に聞こえるし、アコースティックギターの音もとても良い…。
ここまで代表曲、大ヒット曲のオンパレードなセットリスト。熱心なファンとも言い難い僕でも全てメロディーを口ずさめる曲ばかり。
たどたどしいMCでは名古屋のブルーノートでチック・コリアのライブを見に来た、と名古屋の思い出を語ってくれ、「なんだかあったかい」と観客に伝えてくれました。
続いての2曲は「ともだち」と語るダンサーの高瀬 譜希子さんとの共演。「ともだち」ではバンド演奏とコンテンポラリーダンスの演出。
「Too Proud」ではステージで二人だけになっていました。「Too Proud」のラップ部分は宇多田ヒカル自身が担当。聞いたことのないリズムのラップはものすごく新鮮。
ここで又吉直樹さんとのショート・ムービーが始まり、リラックスしたムードで会場は笑い声で溢れ。「大空で抱きしめて」や「残り香」などの曲がバックで使用されていました。
その後日本ガイシホールの中央、PA席のステージに宇多田ヒカルが登場し、「誓い」「真夏の通り雨」「花束を君に」とバラードを3曲続けて披露。衣装も変わっており、白と黒のドレスに着替えていました。
メイン・ステージに歩いて戻ってきて「FOREVERMORE」を披露。「お客さんとの距離が近くて緊張した」ということや、「今回のツアーは20周年の意味もあって」とMCを挟んだ後に流れてきたイントロは、この日一番歓声があがったであろう「First Love」。ギターのアルペジオがすっごい良かった…
そして個人的にこの日一番だった「初恋」。ベースが弾かれていないこの曲ではボーカルを支える低音がないため、逆に歌声がものすごく浮かび上がっていたような。
曲の途中無音になる部分から彼女のアカペラで再開されるまでの約4小節分の「間」に会場は静寂に包まれていました。
本編ラストは「PLAY A LOVE SONG」でハッピーな雰囲気に。この曲でもラストは宇多田ヒカルのアカペラになっていました。
アンコールを待つ間、観客席からは拍手が鳴りやまず。なぜか小さくウェーブが発生していました(笑)
黒のツアーTシャツにワイドパンツというラフなスタイルでステージに戻ってきた宇多田ヒカル。
「俺の彼女」のダウナーなベースのイントロから始まるナンバーはどんどん盛り上がり、バンド演奏はこの日ピークを迎えていた気がします。
そしてデビュー曲「Automatic」!まさかこの曲が聞けるとは思っていませんでした!20年も前の曲とは思えないほど洗練されたナンバー。
あっという間に時は過ぎ「本当に本当の最後の曲です」と演奏されたのは「Goodbye Happiness」
活動休止前に発売されたベスト・アルバムに収録されたこの曲は、以前のツアー「WILD LIFE」の1曲目でした。
2時間近く歌い続けた彼女はラストのこの曲もしっかりと歌い上げ、ステージ下手に来てゆっくりとお辞儀を。
その後上手に移動して、一呼吸したと頭を下げて、最後にステージ中央で観客席に向かって数秒間無言で腰を折って感謝の意を表明していのたがとても印象的でした。
ゆっくりと歩いてステージ袖に姿を消して、約2時間10分のステージは終了しました。
感想とまとめ

全体を通じて感じたことは、宇多田ヒカルほどのビッグ・ネームのコンサートにしてはとてもシンプルな演出だったということ。バックダンサーもいないしコーラスも、派手な演出も特にない。
基本的には楽器の生演奏とバックスクリーンに映し出された映像のみ。逆にそれが音楽と宇多田ヒカルの「声」を存分に楽しめて本当に良かった。
「WILD LIFE」の時は前半はキーボードやシンセサイザーの演奏がメイン、後半からバンドでの演奏という構成だったのが、今回は外国人のバンド陣を引き連れての演奏だったのも印象的。リズムがやっぱりすごくタイトに感じました。
「生の宇多田ヒカル」のコンサートを体験できて本当に良かったです。できたらブルーノートみたいな小さな箱で、アコースティックな生バンドでの演奏・アレンジで聞いてみたいなぁ。
アルバム「初恋」からは1曲めから6曲目までが演奏されました。「パクチーの唄」「夕凪」も聞きたかったし、個人的に大好きな曲「嫉妬されるべき人生」が聴いてみたかったな、というもは贅沢ですかね?

ツアー・タイトルである「LAUGHTER IN THE DARK」というのは「ウラジーミル・ナボコフ」という小説家の小説のタイトルからだそう。NHKの番組で宇多田ヒカルさんが詩を朗読するシーンがあったのだけれど、その詩の作者です。
「笑いと闇」という相反するような、でも通じ合っているような面白いタイトルだなぁと感じました。
衣装も「闇」をテーマにしているように全員黒でした。そして「笑い」は又吉さんのショートフィルムで表現するという、宇多田ヒカルにしかできない表現方法なのかもしれない、と感じました。
DVDが出たら絶対買います!